祝! オレのバイク納車です!(中編)
さて、自賠責・メーカー保証の説明は十分聞いた。
次はいよいよバイクを受け取るのかと思いきや、当店からのサービス品を進呈するので、品物を選んでくれと言う。
1.バイクの車体カバー
2.東燃防止用のタイヤロック
このいずれかを選べと言うので、じゃぁ、両方と言うと、どっちか一つにしろと言う。しょうがないな・・・
バイクは格納庫に保管するつもりなので、車体カバーは必要ない。
それなら盗難防止用のタイヤロックをくれ! と言った。
わかりましたと言って店員は店の整備工場の方へ行き、おもむろにタイヤロックを持ってきた。う~ん、ダイソーでも売っているっぽいやつだ。(笑)
U字型に折れ曲がった鉄の棒を、タイヤのホィールに突っ込んで、Uの字の末端部分をプレートでカチ!とロックする一般的なヤツである。まぁ、無料でくれるんだからその程度のものか。そしてそのタイヤロックの使用方法についての説明が始まる。
しかし、タイヤロック金具はいいのだが、それをどうやって持ち帰る? 結構大きいぞ? バイクに積載できるスペースなど無い。自賠責保険賞の紙一枚でさえ入れておくスペースも無いくらいだ。なので店員に言った。「それって、どうやって持ち帰ればいいんですかね?」と。
驚くべき事に、店員はU字部分に腕を入れて・・・ 「無理!」と言うと「じゃぁ、何かゴムでも見つけてくるのでセカンドシートに縛って行きますか(笑)」などと言う。あのなぁ、あんたこれまで何台バイク売って来たの? いつもそんな感じなの?
店員は整備工場の方から輪ゴムの大き目なものを2本持って来た。輪ゴムぅ? 幅4mmくらい、直径15cmくらいのネズミ色の輪ゴムだ。マジか・・・
店員はタイヤロックを後ろのシートに置き、輪ゴムでリアボディーごと伸ばして、巻き付けた。そして2本目の輪ゴムを先ほど巻いた輪ゴムの前方に巻き付けようとしたが、ボディーが太くなっているので伸ばしきれない。「う~ん・・・ このバイク荷かけフックが付いてないんだよなぁ~。」と言いながら、試行錯誤していたが、リアシートのベルトの部分に巻き付けて縛った。「うん、これで動かなくなりましたよ♪」いや、そう言う話?
なんだがカッコ悪いな。まぁ、いいか。
ともかくタイヤロックは輪ゴムのチカラによって強制的にリアシートに括りつけられた。さて、いよいよバイクを店の外に出して受け取りになる。店員がバイクを押しながら「前にはどんなバイクに乗ってたんですか?」と今更ながら聞いて来たので、RG250Γ、RG125Γ、ホンダのリード90だと言うと、古い話ですねぇ~(笑) とほくそ笑む。大きなお世話だ!
しかし、特段悪意があったわけではなく、インジェクション仕様のバイクに乗っていないので、そこが気になったらしい。しかも私が乗って来たのは2スト車ばかりだったので、インジェクション車の特性を説明しながらバイクのサイドスタンドをかけた。私はその間にヘルメットかぶり、手袋をはめ、出走準備を整えた。
そして納車整備ありがとうございました。今後とも何かに付けお世話になると思うので、よろしくお付き合いのほど。とフルフェイスのヘルメット越しに言い、バイクの横に立つ。
背中越しに店員の視線が刺さる。しかし、私はこのバイクにまたがった事がない。なぜならばこの店の中に並べてあるバイクは、ビッチビッチに隙間なく並べられて展示してあったため、下見に来た時にはまたがって見る事が出来なかったからだ。
なので、今こうして納車受け取りとなった今初めて、またがってどんな感じなのか探らなくてはならないのだ。こんなのアリか?(笑)
バイクにまたがろうとして、いきなりやらかす。(笑) このバイクはSSバイクなので、デザインが GSX-R1000R とほぼ同じ感じになっている。シートからテール回りのラインがエビみたいに突っ立っているので、良くリアシートの位置を頭の中に入れてからまたがないとダメなのだ。
短い脚を高くつき上げるようにして乗らないと、リアシート付近を思いっきり蹴り飛ばしてしまう。やはり冷静を装ってはいたつもりだが、心の臓はドキドキしていたので、思いっきりリアシートを蹴っ飛ばした。(笑)
背中越しに店員の「おっ!」と言う小さな声を聴いたような気がした。それには気が付かなかった振りをしてどうにかバイクにまたがって見た。そしてバイクを立ててエンジンをかけてみる。キックスターターではない。セル始動だ。セルボタンを一回押せば、エンジンがかかるまで自動的にセルモーターが回るので、セルボタンを押し続ける必要はない。
納車受け取り後は皆そのままガソリンスタンドへ行くのが習わしであるようなので、FULLメーターをみてみると、あら、ガソリン満タンに入っている。ちなみにレギュラーガソリン車である。ヤマハの同排気量車はハイオク専用車だそうだが、コスパ悪いな。
それにしてもこの心臓の動悸は何だ? やはり興奮しているんだな。ハンドルを握りしめると、そのポジションの前傾姿勢がかなりきつい事に気づく。クラッチは非常に軽い。握力のない人でも、まったく問題にならないだろう。エンジン音は単気筒なので耕運機っぽい音がする。ギヤを1速に入れ、ゆっくりとクラッチをつなぐと、するすると滑らかに走り出す。
さて、ここからいきなり4車線の中央分離帯がある国道に出なくてはならない。店員はまだ見送りに立っている。道路との境界を示す歩道の縁石まで進みつつ、足を付きそこなって転んだりはしないかと深い不安が頭の中をよぎる。なにせ二十年ぶり? いや三十年ぶりに乗るバイクなのだから、スマートに乗れるはずがない。
ブレーキを握りつつ、どこに足を付こうかと路面を見て決めたところで足を付く。うん、ここまでは無事に乗り切った。往来する車の流れが途切れたところで左にウィンカーを出して流れに乗ると言う戦略だ。だが、いつまでたっても車の流れが途切れない。まだ店の店員がお見送りに立っている。だが車の流れが途切れない。左に出したウィンカーだけが点滅を繰り返している。
車の流れが途切れるまで1分近くこの状態。恥ずかしい・・・
おや? あの白い車の後ろで車の流れが途切れるぞと確認して、スタートの準備、スロットルをあおりつつ、白い車が通り過ぎた瞬間私の頭の中にあるレッドシグナルが、ブルーシグナルに切り替わった! ブワーーーーン!
♪ I can see you runninng hi dezair~! ローズマリー・バトラーの歌声が頭の中に響く。ポールポジションのゆきみ企画選手、見事なスタートを切って第一コーナーへと進みそのままトップをキープ! その後ろを追いかけるのが第二位ランディー・マモラ、エディー・ローソン選手はスタートをミスったのか、五番手に甘んじております。
お~っと! 早くも第一コーナーで転倒! 誰だ! 砂ぼこりが立っているぞ! あぁ、どうやらゼッケン7番と言う事はバリー・シーン選手のようです。
などと一人妄想しながら走っていたら、8000回転も回していたと言う・・・ タイヤの皮むきも、慣らしもこれからだと言うのに、ついアドレナリンが噴射してしまった。
慣らし運転中は6500回転までしか回してはいけないと言われてたのに忘れてた。さて次の交差点を左折しなくてはならないのだが、何速で曲がればいいんだ? お~っと! 赤信号! 一旦停止してからだから1速だね。(笑)
こんな調子でとりあえず気持ちをクールダウンするために、一旦バイクを保管するためのガレージへ戻る事にした。